― 盲点の正体と、思考が止まる瞬間 ―
(バイアスの盲点・メタ認知の錯覚)
私たちはこれまでの記事で、
数字に騙され、物語に引き込まれ、専門家の言葉に思考を預けてしまう理由を見てきました。
それでも多くの人は、こう感じています。
「そういうのは“他人”の話で、自分はそこまで単純じゃない」
この感覚こそが、最も厄介な思い込みです。
なぜ人は「自分だけは例外」だと思ってしまうのか?
心理学ではこれを
バイアスの盲点(bias blind spot) と呼びます。
- 人は
- 他人の判断の偏りには敏感
- 自分の判断の偏りには鈍感
という、非対称な認知を持っています。
冷静に考えれば、
自分も他人も同じ脳を使っているはずなのに、
なぜか自分だけは“見えている側”にいる気がしてしまう。
「知っていること」が、むしろ油断を生む
ここで重要なのは、
心理学を知っている人ほど、この罠にハマりやすい という点です。
- 「これはアンカリングだな」
- 「今のは確証バイアスっぽい」
こうした“ラベル付け”ができると、
人は 「自分はもう対策できている」 と錯覚します。
しかし実際には、
バイアスは
無意識の処理速度そのもの に組み込まれている
ため、
知識だけで完全に避けることはできません。
ファスト思考は「自分が考えている」という感覚を作る
『ファスト&スロー』が示した重要な点は、
- ファスト思考は
- 速い
- 自動的
- 努力感がない
にもかかわらず、
「自分で考えた」という感覚だけは、強く残る
ということです。
だから私たちは、
- 直感で決めた判断を
- 後から理由づけし
- 「納得できる判断だった」と感じてしまう
このとき、
思考していないのに、思考した気になっている。
本当に危険なのは「自信がある状態」
判断ミスを生む最大の要因は、
知識不足でも感情でもありません。
「自分は冷静だ」という確信です。
- 確信がある
→ 立ち止まらない
→ スロー思考が起動しない
この流れができた瞬間、
人は最も無防備になります。
スロー思考は「疑うこと」から始まらない
多くの人は、
「もっと疑うべきだ」
と思いますが、
実際のスロー思考は少し違います。
それは、
「自分は今、考えていないかもしれない」
と気づくこと
から始まります。
判断そのものを疑う前に、
判断の“スピード”を疑う。
判断が速すぎると感じたら、それはサイン
もし、
- 即断即決できた
- 迷いがなかった
- 違和感を感じなかった
そんな判断があったら、
それは「優秀さ」ではなく、
ファスト思考が全面的に処理したサイン
かもしれません。
このシリーズの後半で扱うこと
ここまでで、
私たちは
- 何に騙されるか
- なぜ信じてしまうか
を見てきました。
次に問うべきは、
もっと根本的なことです。
では、人はどうすれば
“考えているつもり”から抜け出せるのか?
次回以降は、
「正しい判断をする方法」ではなく、
判断とどう付き合うか を掘り下げていきます。
私たちの思考は、意識していないところで常に“楽な道”を選んでいます。
次の記事では、その楽さがなぜ「思考停止」に変わるのかを見ていきます。
👉 次へ(執筆中)
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