【ファスト&スロー】なぜ人は「専門家の言葉」を無条件で信じてしまうのか?   

権威バイアス・肩書き効果

「正しい人の意見」を探してしまう私たち

情報があふれる現代では、
一つひとつを自分で検証するのはほぼ不可能です。

だから私たちは、無意識のうちにこう考えます。

「詳しそうな人が言っているなら、正しいだろう」
「専門家が言うなら、間違いないはずだ」

この判断の近道は、とても合理的に見えます。
しかし同時に、思考を止める強力なスイッチでもあります。

ダニエル・カーネマンは、この現象を
権威バイアス(authority bias) として説明しました。


なぜ「専門家」と聞くだけで安心してしまうのか?

「専門家」という言葉には、
それだけで強い心理的効果があります。

  • 知識がありそう
  • 正確そう
  • 反論しづらい

これらは論理的な検討ではなく、
印象による判断です。

ファスト思考(システム1)は、
「誰が言ったか」を手がかりにして、
内容の精査を省略します。


権威は「思考の代用品」になる

本来、判断すべきなのは
「何が言われているか」です。

しかし権威バイアスが働くと、
私たちは無意識にこう置き換えます。

内容を考える → 発言者を見る

これは怠慢ではありません。
脳の省エネ戦略です。


白衣・肩書き・メディアが与える心理的影響

有名な実験があります。

白衣を着た人物が同じ指示を出すと、
私服の人物よりも従う確率が大きく上がるというものです。

重要なのは、
中身が同じでも、外見で判断が変わる点です。


肩書きは「内容の信頼度」を上書きする

  • 医師
  • 教授
  • 専門家
  • 監修

これらは本来、
判断材料の一部にすぎません。

しかしファスト思考は、
それを結論そのものとして扱ってしまいます。


専門分野が違っても、信じてしまう理由

さらに厄介なのは、
専門性が分野を越えて拡張されてしまうことです。

  • 医師が投資を語る
  • 学者が社会問題を断言する
  • 有名人が健康法を勧める

本来なら、
「その分野の専門か?」を確認すべきです。

しかし私たちは、
「賢そう」「実績がある」という印象だけで
話を受け入れてしまいます。


権威があるほど、なぜ反論しづらくなるのか?

権威バイアスは、
判断だけでなく発言の自由も奪います。

  • 間違っていたら失礼
  • 自分が無知に見える
  • 空気を壊したくない

こうした感情が、
スロー思考の起動を妨げます。


「反論できない」は、正しさの証拠ではない

反論しづらさは、
意見の正確さとは無関係です。

しかし人は、
反論できない意見を
正しい意見だと錯覚します。


数字×権威が最も強力な組み合わせになる

ここで、⑳の記事とつながります。

  • 数字がある
  • 専門家が言っている

この2つが揃った瞬間、
判断はほぼ「確信」に変わります。

しかしこの確信は、
検証の結果ではなく、印象の積み重ねです。


スロー思考は「誰が言ったか」を外すところから始まる

『ファスト&スロー』が教えてくれるのは、
権威を否定することではありません。

大切なのは、
順番を入れ替えることです。

  1. 何が言われているか
  2. どんな根拠があるか
  3. それから、誰が言っているか

この順番で考えたとき、
初めてスロー思考(システム2)が働きます。


まとめ|権威は便利だが、判断の代わりにはならない

専門家の言葉は、
判断を助けるためのヒントです。

しかしそれを
判断そのものにしてしまった瞬間、
思考は止まります。

「誰の意見か」ではなく、
「何が言われているか」を見る。

それが、
ファスト思考から一歩離れるための
最も実践的な方法です。


この記事で紹介したことは、
ダニエル・カーネマンの『ファスト&スロー』で、より体系的に解説されています。

具体例が多く、「なぜ自分はいつも同じ判断ミスをするのか」が腑に落ちる一冊です。
気になる方はこちらから確認できます。

この本は一度読んで終わりではなく、
考え方のクセに何度も気づかせてくれる一冊です。

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