ベイズ定理の有名問題【直感で答えてみてください】
次の条件を考えてみましょう。
問題①:確実な検査の場合
ある病気について、次のような検査があるとします。
- 病気の罹患率は1%
- 病気の人を 100%の確率で「陽性」 と判定する
- 健康な人を 100%の確率で「陰性」 と判定する
このとき、
「陽性」と診断された人が、実際に病気である確率は何%でしょうか?
①の答え:100%
確実に当たる検査なので、当然100%陽性です。
これを踏まえたうえで、以下の問題を解いてみてください。
次の条件を考えてみましょう。
問題②:かなり正確な検査の場合
ある病気について、次のような検査があるとします。
- 病気の罹患率は1%
- 病気の人を 99%の確率で「陽性」 と判定する
- 健康な人を 99%の確率で「陰性」 と判定する
このとき、
「陽性」と診断された人が、実際に病気である確率は何%でしょうか?
少し考えてみてください。

多くの人が間違える理由
ほとんどの人は、こう考えます。
「99%も正確なら、ほぼ病気で確定では?」
しかし、この答えは誤りです。
しかもこれは、確率が苦手だから起こるミスではありません。
問題②の答え|意外と高くない
人数に置き換えて考えてみます。
1万人が検査を受けたとします。
病気の人
- 1% → 100人
- そのうち99%が陽性 → 99人
健康な人
- 9,900人
- そのうち1%が誤って陽性 → 99人
陽性の合計
- 本当に病気:99人
- 健康だが陽性:99人
合計:198人
正しい確率
99 ÷ 198 = 50%
ここがポイント
「99%も正確な検査」と聞くと、
もっと高い確率を想像していた人も多いのではないでしょうか。
でも実際は、せいぜい50%。
この時点で、
「確率って思ったより信用できないな」
と感じたなら、感覚はかなり正常です。
問題③:少し精度が下がるとどうなるか?
では次に、条件を少しだけ変えてみます。
- ある病気の罹患率は1%
- 病気の人を**98%の確率で「陽性」**と判定する検査
- 健康な人を**80%の確率で「陰性」**と判定する検査
このとき、
「陽性」と診断された人が、実際に病気である確率は何%でしょうか?
少し考えてみてください。
確実な検査では100%だったのに、99%になっただけで、
的中率は50%の半分になってしまいました。
今回の場合はどうなるでしょうか?
ベイズ定理で正しく計算するとどうなるか
計算をシンプルにするため、1万人が検査を受けたと仮定します。
病気の人(1%)
- 100人
- そのうち98%が陽性 → 98人
健康な人(99%)
- 9,900人
- そのうち20%が誤って陽性 → 1,980人
陽性と診断された人の内訳
| 内訳 | 人数 |
|---|---|
| 本当に病気 | 98人 |
| 健康だが陽性 | 1,980人 |
| 合計 | 2,078人 |
問題③の答え|
陽性と診断されて、実際に病気である確率は、
98 ÷ 2,078 ≒ 4.7%
なぜ98%という数字に騙されるのか?
ここで登場するのが、
ダニエル・カーネマンの名著『ファスト&スロー』です。
彼は人間の思考を、次の2つに分類しました。
ファスト&スローとは何か?
システム1(ファスト)
- 速い
- 直感的
- 努力不要
- 数字や印象に強く影響される
システム2(スロー)
- 遅い
- 論理的
- 意識的
- 計算や比較を行う
今回の問題では、私たちの脳はこう反応します。
- 「98%」という強い数字を見る
- 「陽性」という言葉に反応する
- 深く考えずに「ほぼ確実」と判断する
これは**システム1(ファスト思考)**の働きです。
本来必要だったのは「母集団」を考えること
正しい判断には、次の視点が必要でした。
- そもそも病気の人は全体の何%か?
- 健康な人が誤判定される人数は?
- 陽性の中で、本物はどれくらいか?
これは**システム2(スロー思考)**を使わないとできません。
しかし、私たちは日常生活で
ほとんどシステム2を使わないのです。
この判断ミスは日常でも頻発する
ベイズ定理の勘違いは、医療だけではありません。
- 「成功率90%の投資」
- 「満足度98%の商品レビュー」
- 「当たる確率が高いとされる予測」
どれも母集団を無視すると簡単に誤解します。
それでも人は、
「数字が大きい」という理由だけで信じてしまいます。
私たちはバカだから騙されるのではない
重要なポイントです。
人は、
賢いからこそ直感に頼る生き物です。
ファスト思考は、
- 日常生活では非常に便利
- しかし確率や統計では危険
という特徴があります。
判断ミスを減らすためのコツ
- 数字が出てきたら「全体」を考える
- 確率が強調されたら一度疑う
- 不安や期待を煽られたら立ち止まる
これだけで、多くのミスは防げます。
まとめ|ベイズ定理が教えてくれること
- 直感は正しいとは限らない
- 数字は見せ方で印象が変わる
- ゆっくり考える力が重要
この考え方を身につけるだけで、
ニュース・広告・投資の見え方が変わります。
この違和感を言語化してくれた一冊
この記事を読んで、
- 「自分も98%に騙されてた」
- 「なんとなく判断してたかも」
- 「数字を見ると冷静になれなくなる理由が分かった」
と感じたなら、
その感覚はとても大切です。
その違和感を、
理論と実験で完全に言語化しているのが
ダニエル・カーネマンの
**『ファスト&スロー』**です。
この本は、
- 確率
- 判断ミス
- 直感と論理のズレ
を、「自分のこと」として理解させてくれます。
正直、読みやすい本ではありません。
でも、
一度読んでおくと、
二度と同じ間違いを無自覚に繰り返さなくなる
そんな本です。
「考え方そのもの」をアップデートしたい人には、
間違いなく読む価値があります。
▶ Amazonで「ファスト&スロー(上下巻セット)」を見る
▶ Kindle版で今すぐ読む
▶楽天で「ファスト&スロー(上下巻セット)」を見る
コメントを残す